この作品は、いくつかの偶然(必然?)が重なって、かたちになりました。
10年来の親交のある作編曲家、秋山章氏からのご依頼を受け、彼のメロディに歌詞を書き、ビブラフォンを弾いて歌う、という企画に当初は外部から参加させていただく形でしたが、ミックス段階から私が正式にプロデュースして仕上げることと成りました。
制作中は本当に様々なことがあり、泣いたり怒ったり、翌日スタジオに行くのをやめようかと思った夜もありましたが、アルバムのサブタイトルを「서로가 좋은 곳을 보자(お互いの良いところを見よう)」にしたのは私自身であり、諦めずに最後まで責任を持ってプロデュースしようと、短期間で制約も多いなか全身全霊で制作しました。
人でも国でも、お互いの良いところを、なんとか探して見ようとすれば、ずいぶん景色は変わってくると思うのです。
自分に言い聞かせるためにも、今回作品のサブタイトルとし、メッセージを込めました。
アルバム構成は、前半3曲と後半4曲のヴォーカル曲を、ビブラフォン・ソロ2曲が挟んでいます。
全体にテンポ設定は遅めで、どこかレトロな懐かしい雰囲気が漂うようにしてあります。
前半3曲の歌詞は、私が構想から創りました。
まだ携帯電話やスマートフォンが普及していなかった70〜80年。待ち合わせをした喫茶店。初恋の切なく甘酸っぱい想い出。
誰にでもある、ささやかな日常や疑問を、できるだけストレートに爽やかに描き歌いました。
後半4曲の歌詞は、韓国人の金夏江(キム・ハカン)さんが書かれた素材を元に、できる限り彼女の想いを崩さないように制作しました。
独学でハングルを学んでいたことが、こんな風に役立つとは、思ってもみませんでした。
M5『Thanks Lee』は、2001年に新大久保駅で、ホームに転落した人を助けようとして線路に飛び降り犠牲となられた韓国人留学生・李秀賢(イ・スヒョン)さん(享年26)に捧げる曲です。
M6『叶えてください』・M8『ひとつに』は、拉致被害者の横田めぐみさんに捧げています。2014年にシングルCDとして発売されたこの2曲は、今回ヴォーカルを全編録り直して収録しました。
M7『Red Night Soul』は、2002年の日韓ワールドカップをモチーフに、サブタイトル「서로가 좋은 곳을 보자(お互いの良いところを見よう)」をコーラスで歌う、メッセージソングです。
アルバムタイトル『合わせ鏡』は、このサブタイトル「서로가 좋은 곳을 보자(お互いの良いところを見よう)」を、なんとか日本語の一言で表せないかと考えて名付けました。
アートワークも、アルバムタイトルを表現しています。ジャケットはリバーシブルになっており、お好みの面を表紙に入れ替えてお楽しみいただけるよう、デザインしました。
森岡万貴作曲・演奏のビブラフォン曲『Stained Glass』2 version は、同じ空間のステンドグラス窓から差し込む光の、
M4 “Vespertine” は夕暮れの時間帯を、
M9 “Sunrise” は朝日が差し込んで光が乱反射し始めた時間帯を、
それぞれ描写したインストゥルメンタル曲です。
M9 は、ヘッドフォンでお聴きいただくと、面白い発見がございます。
不思議な御縁がつながって、『合わせ鏡』という作品が完成しました。
是非お聴きいただき、心のままに何かを映し出していただけたなら幸せです。
2017年 2月 7日
森岡万貴
森羅万象